ラブレス (新潮文庫)本無料ダウンロードpdf
ラブレス (新潮文庫)
strong>本, 桜木 紫乃
ラブレス (新潮文庫)本無料ダウンロードpdf
によって 桜木 紫乃
4.4 5つ星のうち76 人の読者
ファイル名 : ラブレス-新潮文庫.pdf
ファイルサイズ : 20.18 MB
内容紹介 謎の位牌を握りしめて、百合江は死の床についていた――。彼女の生涯はまさに波乱万丈だった。道東の開拓村で極貧の家に育ち、中学卒業と同時に奉公に出されるが、やがては旅芸人一座に飛び込んだ。一方、妹の里実は道東に残り、理容師の道を歩み始めた……。流転する百合江と堅実な妹の60年に及ぶ絆を軸にして、姉妹の母や娘たちを含む女三世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説。 内容(「BOOK」データベースより) 謎の位牌を握りしめて、百合江は死の床についていた―。彼女の生涯はまさに波乱万丈だった。道東の開拓村で極貧の家に育ち、中学卒業と同時に奉公に出されるが、やがては旅芸人一座に飛び込んだ。一方、妹の里実は地元に残り、理容師の道を歩み始める…。流転する百合江と堅実な妹の60年に及ぶ絆を軸にして、姉妹の母や娘たちを含む女三世代の凄絶な人生を描いた圧倒的長編小説。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 桜木/紫乃 1965(昭和40)年、北海道釧路市生れ。2002年「雪虫」でオール讀物新人賞を受賞。’07年同作を収録した単行本『氷平線』でデビュー。’12年に『ラブレス』で「突然愛を伝えたくなる本大賞」、’13年に同作で島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で直木賞をそれぞれ受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 続きを見る
以下は、ラブレス (新潮文庫)に関する最も有用なレビューの一部です。 この本を購入する/読むことを決定する前にこれを検討することができます。
圧倒的な読後感。気持ちのありようが普通の本を読んだときとはまるで違う。まるで何か薬を一服盛られたかのように、何時間もその感覚からさめることはなかった。読み始めからしてそう。独特な世界に引き寄せられ、抜けられなくなる。楽しい話はほとんど無い。もっぱら悲惨な荒々しい出来事がどこまでも綴られていく。こう言うと語弊があるが、こんなものをよく書き続けられるものだなあと感心した。この作家はどこまで強いのか。登場人物の多くが人間的に歪んでいる。そして、誰もが真剣に生きているというわけでもない。単純に「いい人」と言えるような人は一人もいない。現実の人間世界にあまりにも近いのだ。貧しく、無教養で、暴力的。飛び交う暴言。諦観。放蕩。身勝手。こう聞くとうんざりするような話に聞こえるかも知れないが、この作品が島清恋愛文学賞を受賞している。心温まる愛の話なのだ。戦後しばらくの北海道の開拓家族から生まれた物語である。もちろん電気も水道もない。親父はアル中で働かず、すぐに母親を殴る、蹴る。向学心のある娘の進学を許さず、街の薬屋に奉公に出させる。それも親父の借金のカタ。受験勉強をしている娘に「貧乏人の娘が何を考えているんだ」。薬屋で働き出すと、そこで主人に強姦される。「借金無しにしてあげるよ」と言われながら。娘はその後すぐ、旅芸人の一座に付いて出奔する。養えないので親戚に預けられていた妹が、弟たちの面倒を見させるために、10歳になってから突然、無理矢理連れてこられる。妹は、風呂に入らない家族の体の臭さに驚き、電気がないことに驚き、母親だと言われた女が文盲であることに驚く。妹も当然高校へはやってもらえなかった。実を言えば、これに通じる人間模様というものは、私自身も小さいときから見ている。実際、私によく飴をくれた近所のオバさんは文字が読めなかった。女中に入った家で強姦されて気が狂い、それ以降死ぬまで数十年、実家の押し入れの中で暮らしていた人もいた。家族の間で優しい言葉を掛け合うような余裕もない。人がどう生きるべきかなど考えることもない。そんなものは、天上の世界のものだ。互いを傷つける言葉を吐き、気持ちを高ぶらせ飯を食う。この世界を基準にすると、現在の生活はまるで漂白された綺麗ごとの世界のように感じられる。ほんの数十年前まで、北海道とは言わず、埼玉の田舎でも同じようなものだった、のだと思う。理髪店の職人として一人前になった妹が結婚式を挙げるシーンがある。さすがに、開拓村の家族も呼ばれている。控え室に行った姉に、一番上の弟が粗野な言葉遣いで憎しみのこもった皮肉を言う。「女郎」と。弟たちにすると、見捨てられたという思いがあるはずだ。なぜ、ネエチャンは俺たちを地獄に置き去りにしたんだという気持ちが。一番下の弟は中学にも行かせてもらえなかった。家族が披露宴で恥をかかせないか、困ったことをしでかさないかと姉妹は気が気でない。披露宴が終わったらもう二度と顔を見せるな、と妹は家族に言ってあった。姉も披露宴の後、お祝いの席に水を差す前に早く帰れと言う。家族は貸衣装を脱ぐ。下は野良着同然の服。再び毒づいた弟も、アル中の父親も、太った母親も後は無言。このやるせなさ、身を切られるように分かる。言いたくない暴言を吐かずにはいられない。暴言の矢は自分自身にも突き刺さる。自分が姉妹から恥ずかしがられる存在であることを自覚しながら、自分ではどうすることも出来ない。胸が熱くなる。希望は、無い。そういう殺伐とした風景の中に愛の物語を紡ぎ出す。北海道の開拓農民・漁民を取り上げた作品として有島武郎の「生まれいずる悩み」、「カインの末裔」などがあるが、この作品(に限らずこの作家の作品)は、それらの作品とは深さが違う。肉薄度が違う。切実さが違う。登場人物の悲鳴が行間から聞こえてくるかのようだ。なお、筆者は直木賞作家。「ホテルローヤル」を書いた桜木紫乃である。「オール読み物9月号」に載った受賞作の短編3作を読んで興味をそそられ、この作品のkindle版を読むことにした。
0コメント