やってみなはれ―芳醇な樽

……酒税法に則り、甘味果実酒やリキュールすら混ぜたイミテーションのウイスキーやブランデーを「水割り用濃縮ウイスキー」とのたまい「水で割ったらアメリカ〜ン」と売りまくったサントリー帝国が、ハナから「混ぜ物」「イミテーション」とリアルに分かる。所詮は提灯本だが、巧まずしてポロリのリアルには膝を打つ。たとえばP35、サントリー創業者の鳥井信治郎氏の若き日、奉公先の主人との会話「…つまるところニセモンや」「偽でっか」「そや、葡萄酒に見せかけた、葡萄酒風の味つけの飲み物ということは、本物やないということやろ」…この時の経験が信治郎氏に刷り込まれ、サントリーのDNAになったのは、想像に難くない。ほかに「化学」「調合」なるタームも出てくる。自社製の若干のモルトに、アルコール、バルクで安く輸入したスコッチ・モルト、さらには甘味果実酒やリキュールまでも「調合」して、オールドやリザーブを作るさまは、確かにブレンディングではなく化学の実験を彷彿させる。図書館で借りたのだが、ライン引きと附箋貼りをしたいのでAmazonで古書を購入することにした。サントリー告発本としてお勧めは、平沢正夫著「間違いだらけのウイスキー選び」伊達四郎著「恐るべきサントリーの魔術商法」。また、日本消費者連盟編「ほんものの酒を!」には、サントリーのウイスキーなどの極秘の「調合」表がスッパ抜かれている。ニッカの創業者竹鶴政孝氏は「ウイスキーと私(ニッカウヰスキー発行・非売品)」なる冊子の中で「もし日本のウイスキーに級別がなかったら、日本のウイスキー業界は、もっともっと進歩していたと思っている(P154)」と書いている。かつて級別があった時「原酒がコレだけ入ってれば●級」と規定されていた。あくまでもスコッチタイプのジェニュイン・ウイスキーを目指した竹鶴氏は、こうした規定はおかしいと痛烈に感じたのだろう。