数学セミナー2016年5月号 目に見える幾何学

今回のCoffee Breakは、奈良女子大の山下靖氏による執筆。「計算機の働き方のモデルとコの字型の原理」。その中で、『数学で何が重要か』（志村五郎著、ちくま学芸文庫）の中にある「コの字型の原理」の紹介および引用があります。私は文庫本にも当たって確認してみましたが、両氏の説明に納得できました。孫引きの孫引きをすると、「コの字型の原理」とは、「数学的対象物AとBがあり、共にある性質Pを持つ。AとBにある作用を施して第三の対象物Cを作る。その時Cが性質Pを持つということを証明するのに、Aが性質Pを持つということをPの定義によって書き表わしてそれをA'とする。同様にBに対してB'と書く。A'とB'からC'を導く。C'はPの定義によりCが性質Pを持つことを示すからそれで証明終り。」これは、大学教養部門での数学の初歩で、重要なことであると思います。さて、少し別のことを。私たちの国の文化には流行の周期というものが認められることがあって、ちょうど平成１０年の頃に面白いことがありました。私たちの同級生がそれぞれバラバラの場所で仕事をしていて、ある者は障がい者教育での実践から学校教育におけるコミュニケーション理論の基礎を立ち上げ、ある者は病院での訪問者の進むラインにおける手続きの合理化の実践を商品化し、ある者は政治家として福祉・保健・医療における問題提起をし、そして、私は福祉の指導監査のシステム合理化の研究をしていたのです。仕事の内容がどういうわけか接近したのです。そして、平成２８年の今、今度はシステム論の基礎研究において、また複数の場所で同様の課題が持ち上がっています。それは、リテラシーにおける「躓きの石」の排除の問題です。一番影響が強い、というよりもひどいことになっているのが、今日の我が国の政治・経済における問題でしょう。合力せねばなりますまい。